子供が産めない私は、彼氏と一緒にいたらいけないと思った。
大好きな人だから、幸せになってもらいたいと思った。
でも、離れるのは嫌だった。
ずっとずっとそばにいてほしかった。
「ごめんな」
彼氏を見たら、泣いてた。
彼氏が泣いたとこなんて今まで見たことない。
いつもにこにこしてて、弱音も吐かない彼氏が泣いてた。
「ひとりで病院なんか行かせてごめんな…」
彼氏は私の手を強く握ってた。
「大丈夫だよ、あんたがおらんくてもあたしは大丈夫だから…」
精一杯の強がりだった。
今すぐ抱きしめて欲しいのに、
くだらない意地が邪魔をした。
「別れよう」
私の顔は化粧がぼろぼろに落ちて涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
「ぶざけんな!勝手に決めんなよ!」
はじめて彼氏が大声で怒鳴った。
「ずっと一緒だって言うたやろ…」
「でもあたしとずっと一緒におっても人並みに幸せになれんのは、
あんただって分かってるやろ…」
悲しそうな顔をしてた。
「俺、ガキなんかいらん。」
嘘だ。ほしいって話何度もしたのに。
女の子がいいねって言ってたのに。
「明日、渡そうと思ってたんだけど」
彼氏は作業着の中から箱を取り出した。